バイトの気配
(PM23:43下に続きを足しました。)
タイミング間違えたけど、昨日mixiに書いたことをとりあえずペタリ。
また夜に別の日記を書きますが……。
…………………………
夕方。
そろそろ食堂に行くかぁ、それにしても今日はお隣かどこかがガタガタうるさいなぁとドアを開きました。
左右の部屋の明かりがついている。
あれ? 確か両隣さんは引っ越されたはず……。
と、見ると自分の自転車が移動させられているではないか。
一体なんだと思うと、駐車場に見慣れない縦長の車が。おばさんが中でごそごそやっている。
もしかして、新居の人だろうか。(おばさんはお母さんで)
「すいません、自転車邪魔でしたか?」声を掛ける。
「あ、風で倒れるかと思って動かしたんよ」はつらつとした伸びの良い声が返ってくる。
それはわざわざお気遣いを……と口にしようとしたとき、おばさんから言葉の続きが。
「あなたバイトしてる?」
「え? いや、してませんけど」
「じゃあ今から手伝ってよ!」
はい!?
なんだなんだ。一体なんなんだ。
「私らね、今ここの部屋を掃除してるの」
あぁ、業者さんでしたか……。
大家さん、わざわざそういうことまでやってくれていたんだ……感謝。
で。
「人手が足りなくてね、ちょっとバイトしない? 何もしていないのも勿体ないでしょ」
「いや、あの、その」
色々用事は抱えているのだが、なかなか説明しづらいことではある。
「何学部?」
「え、工学部です」
「じゃあピッタリじゃない!」
「な、何がですか」
「ほら、医学部だと2年生から広島市に行かなきゃならないじゃない。ピッタリ」
その理論でいけば殆ど全学部がピッタリじゃないですか。
どんだけストライクゾーン広いんですか。システムオールグリーンですか(違)。
そしておもむろに片方の部屋のドアを開けるおばさん。
中には2人の学生。作業の手を止め、こちらを見る。
「これから手伝ってくれるんだって!」
えええええええええ!?
ちょちょちょちょ、ちょっと待った! なにその急展開! ジャンプの打ち切り最終話よりも速いぞ! 中の2人も「やった!」とか言ってるし!
「いやいやいやいや」
「冗談だって」
何をご冗談を。
しかしまずい。このままでは契約させられてしまう。せめてもうちょっと猶予を……
「でさ、もっとこう、汚れてもいい服を着てね」
「はぁ」
「ジャンパー、持ってる?」
「持ってないです……(やった!)」
「じゃあ貸したげる」
猶予ない。
このあたりから冷や汗が分泌されてくる。
まずい。
契約させられる。
だから、せめてもうちょっと考えさせてください。
そうだ。
そもそも俺は食堂に行くためにドアを開けたんだった。
逃げねば。
「あの……すいません、ご飯食べに行かなきゃならないんですが」
「そんなのいいよいいよ! パンあげるから!!」
タスケテーーーー!!
何コレ。逃げ道封鎖上手すぎだろ。レインボーブリッジどころではない。
仕方ないので、奥の手。
「ごめんなさい、今日はちょっと……人と会う約束があるので」
これは嘘ではなく、実際に約束がある。ただ、場所は自分ち。
「あー、それなら仕方ないわねぇ……。まぁ、いきなりは無理よね」
はい……せめて考える時間を下さい……。出来そうならやらせていただきますので……。
「あ、そうだ」
「はい」
「バナナいらない?」
はい!?
と、車からバナナを出してくるおばちゃん。「この生産者の人が知り合いなの。すごく美味しいから」と一房(一袋)ポンと手渡してくださいました。
しまった。物をもらってしまった。今ここに明確な恩が生まれた。
返さねば。
って、働くしかないではないか。
バナナをもらったからにはサルの如く動かねばならないのではないか。
「じゃあ、今から台所まわりの壁をよろしくね」
「ウッキキィ」
あんまりだ。
ていうか何で言語中枢までサルになってるんだ俺は。演技派にも程がある。
駄目だ駄目だ、とりあえず今日だけは避けなければ。
「じゃあ、また、出来そうだったら、手伝わせて貰います」
「あとで名刺入れとくからね!」
余念なさすぎ。
この調子では、次に会ったときは契約書にサインさせられてしまうと思って逃げました。
食堂では閉まるまでぶるぶる震えながら過ごし、ジャングルブックでは漫画を数冊読み切りました。待つこと21時過ぎになって、やっと家に入りました。
でも、人手が少なくて困ってるようだったから、力になれるのなら頑張りたいな……。さすがに今日みたいに用事があるときは無理だけど(そもそも向こうのシステムが不明)、都合をつけられるのなら助かるし、やっぱりこういう人たちのお陰で今住んでいるところが綺麗なんだから、裏方になって報いられるのであれば。
明日も来るみたいなことを言われていた気がするので、その時はジャンパー着させてもらいます。