放送部で得るもの

昨日に書いたとおり、今回は放送部そのものについて。


殆どの放送部は、NHKが主催する全国規模の大会で優勝することを目指しています。


設置されている部門は、個人部門がアナウンス、朗読。団体部門がテレビとラジオそれぞれの、ドキュメンタリーと創作ドラマ。
腕を磨き、構成を練り、実力をつけていくのが放送部の日常的な活動です。


で、今や自分は既にOB2年生です。
現役時代に深く関わっていたのはドキュメンタリー制作(構成・編集など全て)だったので、この度部室にお邪魔したときも、鋭意製作中の作品を見せてもらったり、構想を聞かせてもらったりして、色んな意見をぶつけてきました。


今になってつくづく思うのですが、ドキュメンタリーを制作することは、実社会に求められる能力を考えると非常に有効なトレーニングでもあります。


高校生が作るドキュメンタリー、というといかにも「アマチュアの自己満足に過ぎないもの」と軽視する人もいるかもしれませんが、違います。全く違います。
大概みんなが目指すのは「NHKが作るようなプロの作品」であり、そのために日々研鑽を重ね、凄まじい作品を作っていきます。
とくに秀でた作品は、プロフェッショナルのそれを軽く超越します。
そして、そういう作品を作る人がきっと次にプロの世界へ飛び込んでいくんだと思います。


で、ドキュメンタリー制作。
取り上げるテーマを決め、取材し素材を集め、主張を定め、構成を組み立てていく過程が存在します。
メンバーの中で喧々囂々たる議論が発生するし、あるいは一人で深く深く悩み続けることもあります。
その作業は大会が迫るにつれて日常を支配していき、ついに夢にまで出てくる場合もあります。自分は毎日見てました。


そのような過程を経てドキュメンタリー作品は作り上げられます。
様々な工夫の結晶です。いかにして、自分の主張を分りやすく受け手に届けるか。
努力を積み重ね、違和感と反論の刃をくぐり抜けた素晴らしい作品には、心の底から感動させられるものがあります。


で、この一連の流れというのは、プレゼンテーションと同じものであったりするのです。


プレゼンは主張を相手に納得させるために、効果的なシナリオや演出を考える必要がありますよね。
伝わりやすくするために整った論の流れを作り上げないといけない上に、発表そのものの技術も大切です。
これらは独立して存在するファクターではなく、最終的な発表で美しいまとまりをみせるものでなければなりません。つまり全要素・技術の高次元での統合が不可欠であるということで、それはもはや一種の作品といえるのではないでしょうか。


さかのぼって考えれば、抜き出せる本質は同じです。
構図で見て「自分の言いたい事を上手く相手に伝える」というところが一緒なので、当然っちゃあ当然ですが。


先述の通り放送部はこのドキュメンタリー制作に命をかけます。魂を削ります。肌が痛みます。毛根が弱ります。成績が下がります。最後のは自己責任です。
そこまでするのだから、トレーニングとして評価すれば番組制作はとてつもない効果をあげているわけで。
実際、自分が大学生になってからこういう能力を何度も問われ、そして放送部時代の積み重ねによってそれなりの評価を勝ち得てきました。
物事を多面的に捉えたり、自分の意識の置き場を容易く移動させ、新しい見地によって思考を開拓していったり。全て高校時代に培われたなぁ、と思います。
(言うて自分はそれほど大したことはないので、あくまで一般論としての「トレーニング」の評価です)


それはつまるところ「思考力」であり、それは部活動を卒業してからもそう衰えることはありません。
それどころかいよいよ必要性を増してくる以降の人生のなかで鋭敏さをより増していくことでしょう。


だから、放送部時代に真剣に番組制作(ドラマなども含め)に取り組んできた人は、実はものすごいスタートダッシュをしていたともいえます。


きっと後輩たちはこれから何度も何度も実感することだろうと確信しています。
意見を述べるだけのレポートなんて本当にちょろいもんさ!


で、今の自分といえば、これに言語学の理論を盛り込み、言葉の選び方から意思を読み取ったり、あるいは意識を誘導したりするところまで能力を高めていけないかとちょっとずつ努力しているところです。


表現というのは、天才以外にとっては技術と感性の折り合いだと思います。
なので、生理的な部分を大事にしながら、いかに理論的な部分で、丸め込めるのではないやり方でいかに感情を操るか。そういうことを色々と考えていたり。


自分自身、放送部で色んなことを学んできて、それを新しい下地にしてどこまで行けるのかが楽しみですわー。



さてさて、気が付けば放送部のいいところ(あくまで一面だけど)を紹介するような内容に。
一応は、本気で頑張ってきた人間が言うことだから、得るものに関しては当たってるはず!