良い特集だ
バタバタの日々が続いてつい忘れてしまっていたのですが、思い出して雑誌『ダ・ヴィンチ』を買いました。
リニューアル第1号、ということらしく、気合入ってます。
[特集] ☆☆☆(三つ星)ワンコイン文庫
うまいなぁ。
ワンコインで三つ星かよ。
それで雑誌もワンコインでお釣りがくるってか。
買うしかないじゃないか。
って感じで思わず手に取ってしまったのですが(決して表紙の蒼井優にやられたわけではない)、なかなか良い特集でした。
自分ならどんな本を推すだろうかなぁ、と思いながら見ていたら、考えもしなかった発見が。
『雪沼とその周辺』(堀江敏幸)って、2004年のプラチナ本 OF THE YEARだったの!?
あ、疑問符の方に説明しておきますね。
この『ダ・ヴィンチ』という活字バンザイ雑誌は、毎月「絶対外さない! プラチナ本」というコーナーを設けて、編集部の方々がセレクトした1冊を紹介しているのですが(今月は『新世界より』(貴志祐介)でした)、年の暮れに、1年間選んできたなかでも特に優れているとした本を(たしか)3冊選び、「プラチナ本 OF THE YEAR」という賞を与えているのです。
プロが選ぶ作品なわけですから、好き嫌いはあるにしても、クオリティは凄いものばかりです。
で、話は戻って『雪沼とその周辺』。
もともと評論はさっぱりなのでこれは論じられないなぁと扱いを悩んでいたのですが、上記のワンコイン文庫特集にあたってお前も何か薦めろ、と言われると迷わず、即答で返す答えがこの1冊です。
えーと、堀江敏幸といえば、去年大学生になった人たちは、好きか、嫌いかの両極端だったりしませんかねー?
はい、そうです。
センター試験の小説に選ばれていました、この作家。そしてこの本(正確には短編集)。
『送り火』という1篇でしたね。
当時は未読だったのですが、偶然演習で出会った、『スタンス・ドット』がどうしようもなく素晴らしく、問題を解くのはそっちのけでただひたすら感動していた記憶があります。
寂れたボーリング場の経営者、訪れるカップル、その見事な人物造形(配置)、ボーリングを効果的に使った情景描写、とにかく計算され尽くした流れがあり、多面的な捉え方が出来る幻想的なラストには陶酔してしまいました。本当によい短篇だ、と今思い返してもはっきりと言えます。
他の作品も質が高く、オススメです。
正直言って、380円という定価は安すぎます。
そうかぁ、これが選ばれていたか……。
まだ『ダ・ヴィンチ』を読んでいなかった頃だから全然知らなかった。
自分の審美眼をちょっと肯定された気がして、嬉しいですね。
たまたまだろうけど……。